名取くん、気付いてないんですか?
リサちゃんと相澤くんが二人で話している。ここでのわたしの行動は、二人の邪魔をする、だ。現に、昨日までのわたしならそうしていた。
でも、今朝の言葉が忘れられなくて。どういう意味なんだろうって、考えても答えはでない。わからない、わたしがリサちゃんの何を縛ってるっていうんだろう。
ついには隣の和久津くんまでもに心配されてしまった。もしかして、わたしまんまと相澤くんにはめられたのかな。
こうやって意味不明なことを言って、悩ませて、リサちゃんとの時間を邪魔されないようにしてるとか? やっぱりリサちゃんは優しいからあからさまに拒否しないで話してるし。
本当は迷惑してるんだろうけど……。
本当は……。
……本当は?
……本当は、どうなんだろう?
「リサちゃん」
リサちゃんがひとりになったときに、話しかけた。
「みっちゃん、どうしたの~?」
パッと、リサちゃんは笑顔になる。ほら、明らかに相澤くんといるときよりわたしといた方が嬉しそうだ。やっぱり、あれはわたしを離すために適当なことを言ったんだって。
……でも一応、聞いておこうかな。
「……あの、わたし、リサちゃんのこと縛ってる?」
「………え?」
聞いた瞬間、一瞬だけ。リサちゃんが驚いたように目を見開く。でも、それは本当に一瞬で、次の瞬間には元通り笑顔に戻っていた。見間違えかと思うくらいの一瞬。
でも、わたしはそれをはっきり捉えてしまった。疑惑が、少しだけ確信に偏る。
「え~っと~、急にどうしたの~?」
「なんか、相澤くんに言われて。どういう意味かなって」
「……相澤くんが、みっちゃんは私を縛ってるって?」
「うん。わたし、何を縛ってるのかなって……」
リサちゃんは困り顔で「う~ん、別に気にしなくていいと思うよ~」と答えた。
そりゃあ、リサちゃんも急にこんなことを聞かれたら困るだろう。わかっていたけど、なんだか聞いてしまいたくなったのだ。
わたしも、心のどこかで何かが引っかかっている。心当たりはあるらしい。でも、それが何かは、わかっていない。
もやもやしたままは嫌なので、リサちゃんに直接聞いてみたけど。リサちゃんもわかるわけないよね。うん、やっぱり相澤くんが錯乱させようとして適当言ったのかな。
今は、そういうことにしておこうかな。