名取くん、気付いてないんですか?
で、結局、わたしは和久津くんと相澤くんに嫌われてるのか?
和久津くんは言うまでもないにして……相澤くんの真意を確かめなくては!
午後の授業中。クリームパンを手に入れられないままお昼を過ぎた和久津くんは、頭を抱えていた。あー、うわー、わざわざ振り向いてまで見てしまうくらいにすごく気になる。
でも駄目だ。今は和久津くんじゃなくって、相澤くんに意識を向けないと。
あ、ついでに名取くんもちょっと見てもいいかな、真面目に授業を受ける名取くん、かっこいい! 授業中にだけかける眼鏡、ありがとうございます!
ふう、名取くん補給完了。あんまり見すぎても迷惑だからね。さてさて、本題に戻ろうっと。
和久津くんにわたしのことどう思ってる? なんて質問をした暁には、「は?」と冷たい目を向けられるに違いない。あっ、想像するだけで怖い。
だから、まずは相澤くんから!
『わたしのこと、どう思ってる?』
先生に見つからないように、ルーズリーフの切れ端をさっと相澤くんの机に差し出す。そして、差し出してから気付いた。
……あれ? この質問……わたしが相澤くんのこと好きみたいじゃない!? だ、大丈夫だよね? 相澤くん、わたしが名取くんに好意あるのわかってるしさ! ……え、わかってるよね?
焦るわたしは、くすくすと笑う相澤くんに気付けずにいた。
『さぁ? どうだろうね』
しばらくして、そんな返事が返ってくると、わたしはさらに目を回す。
——なに、その曖昧な返事は!
次!
『わたしのこと好き? 嫌い?』
どうだ! 嫌いなら嫌いではっきり言ってしまえ!
そしてその返事がこちら。
『どうかな』
もう、やめてー! 絶対からかわれてる! わたしの純粋な乙女心をもてあそばないでーっ!
とか言いつつ、わたしが考えた次の質問は……。
『好きな人とかいるの?』
いや、だからなんでわたし、こんな質問考えちゃうのー! あれ、もしかしてもてあそんでるのはわたしの方だった!?
はぁ……もういいや。ここは大人しく返ってくるのを待とう。相澤くんのことだから、たぶんわかってるだろうし、彼にとってわたしはただのからかいがいのあるツボな女だ。あっ、自分で言ったけど辛い。
相澤くんがそうなら、名取くんにはわたしはどう映ってる? 変な女だって思われてないかな……。
スッと横から紙が来て、自分の方へ寄せて見る。
あー、わたしなんていう質問したんだっけ? 確か……好きな人がどうとか……? 軽い記憶喪失っぽくなってた……。
『いるよ』
え、はっ、い、いるのー!?
どうした相澤くん、急に素直になって……。
ん? この流れだと相澤くんの好きな人ってわたしっぽくない? うーん……。いやいや、ないね。だって今もくすくすと笑う声が横からする。
く、くっそー! 冗談か! またからかわれたのかよ! そんなにわたしの反応は面白いですか、予想通りに動きますか! 悔しいーー!!
朝霧みお、今日も相澤くんには敗北です。