名取くん、気付いてないんですか?


 あらかじめ切り分けられているそれは、たぶんお母さんがやったのだろう。いくら成長したリサちゃんとはいえ、まだ切り分けは早いと思う。


 見くびり過ぎなのかな? いや、でも、わたしは中学生のときに失敗する現場を目撃していてね……。



「えへへ、取り分けるね~」



 おもむろに、リサちゃんはお皿を片手にフォークを一切れのショートケーキの下へ滑り込ませる。


 ……ん? えっ、待って、リサちゃん。


 切り分けでも危険なのに、そんなことしようとしたら――!



「あっ」



 それは予想通り、見事にぐしゃりと潰れた状態でお皿に乗ることとなりました。


 ……ま、まぁ、ケーキあるあるだよね? ……ね?



「ごめんなさい……これは私が食べるね……」



 しょぼんとわかりやすく落ち込むリサちゃん。次いで「みっちゃんは自分で取り分けてね……」と言うのは、せめてものつもりだろうか。


 でも、そんなことお構いなしに、わたしはリサちゃんの手からフォークを奪うと、これまたリサちゃんの手に持たれたお皿の上のケーキめがけてフォークを刺す。


 それから、ゆっくりとリサちゃんの視線が付いてくるのを感じながら口に運んだ。



「……うん、美味しいよ、リサちゃん!」



 素直な感想を口にする。と、リサちゃんの頬が……徐々に赤くなっていく。



「みっちゃん……みっちゃんがそんなだから、みっちゃんはいつまでも私の一番のままなんだよぉ~!!」



 あ、あれ?


 間違ったことはしてないんだけど……。わたし、また相澤くんからリサちゃんの隣を死守しちゃったみたい。


 なんてな、ざまーみろ相澤!

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