100%ない恋物語
店を出た俺たちは、
駅に向かって歩きはじめた。
恵比寿駅に着くと、
黒いリムジンが止まっていた。
結実さんが車に近づくと、ドアが開き白髪の
品の良さそうな男性が出て来た。

「お帰りなさい結実お嬢様、どうぞ」
そう言うと、後部座席のドアを開けた

俺に気付き
「そちらの方は?」

「私の落とし物を拾ってくださった最上さんです」

「執事の東海林玄三さんです」

「東海林です。よろしくお願いします」

「最上です。よろしくお願いします」

「そうでしたか。ありがとうございます。」

「いえ、当たり前の事をしただけです。」
この人どっかで?なんなんだこの感じは?

「夕飯を一緒にしたくて誘いました」

「そうでしたか、では最上様もどうぞ。」

「ありがとうございます」
100%お嬢様だ!

最上様ってなんか社長みたいで、
ちょっといい気分
でも、両親は・・厳格な人?

車の中は、ふんわりと良い香りがしていた
30分程走ると、一軒の建物が目に留まった
まさか、あれ、じゃないよね?
すると、そのまさかの建物に入って行った

「あの、もしかして此処ですか?」

「はいそうです」

豪邸だ・・こんなのドラマとかでしか見た事がない!

玄関と思われる方には、
女性が一人立っていた。
車を降りると、女性が声をかけた。

「お嬢様お帰りなさい。」

「ただいま。こちらは、最上さんです」

「最上です」

「最上様もどうぞ。」

ドアが開き部屋の中へ入ると、
同じ服を着たメイドさんらしき女性が2人いた

東海林さんは奥の部屋を指差して
「あちらの部屋でございます」

「あの結実さん、俺来ても良かったのかな」

「はい。私、よく分からないですけど最上さ
んといると、暖かい気持ちになります」

「暖かい気持ち・・」

なんだ暖かい気持ちって?
もしかして、俺が思っていた懐かしい感じと同じなのか?

東海林さんがドアを開けると良い匂いがしてきた
目の前には、美味しそうな料理が並んでいた
席の中央に案内された

「結実お嬢様どうぞ。
最上様も隣へお座り下さい」

東海林さんが椅子を引き俺たちは座った。

「旦那様と奥様をお呼びして参ります」

そう言うと、東海林さんは部屋を出て行った
結実さんの後ろには、メイドさんが2人
向かい側には1人立っている
俺は膝の上に両手を置き緊張しているせいか
じっと前を見て固まっていた。
3分くらいだろうか、
ドアの開く音が聞こえた
俺はドアの方を向くと
男性と女性が入って来た
もしかして、
結実さんのお父さんとお母さん!
そう思った瞬間!俺の手は震えていた
それに気づいた結実さんは

「最上さん寒いですか?」

「え、いや、寒くないです大丈夫です」

「手が震えていたので、
それなら良いのですが、
今日は少し冷えるので
寒かったら言って下さいね」


「はい。ありがとうございます」

2人は俺たちの向かい側まで来た。
よく見ると、
男性は恰幅が良く、顔は眼鏡を掛けいかにも頑固そうだ

女性は結実さんにどこか似ていて、
綺麗な人だ
ただ、教育ママが掛けていそうな眼鏡だった

終わった!?俺は追い出される!?
きっと、こうなるんだろうな?


「なんだ君は!誰だ!
結実が連れて来たのか?」

「あら、なんですの!
この品のない男性は!」

「お父様お母様、
最上さんは私が落としたハンカチを拾って
下さったのです」

「ハンカチ?だからって、
連れてくる事はな いだろう!
食事が不味くなる!
東海林この男を外に放り出せ!」

こんな感じになるんだろうな?
そう思うと、金縛にあったかのように身体が動かなかった!

結実さんが席を立ち、俺も席を立った
両親が俺たちの前に来た時

結実さんが俺を紹介した。
「お父様、お母様、最上さんです。
私が落としたハンカチを
拾って渡してくれました
そして、夕食もお誘いしました。」

「最上です。」

結実さんは怒られ、俺は晒し物にされ
そして、追い出される!
< 2 / 9 >

この作品をシェア

pagetop