戦乱恋譚
ゆらり…
濁る翠色の瞳。朧は、まるで操り人形になったかのように十二代目の言葉通りに動き出した。
「さぁ、朧!陽派の折り神を始末するのだ!」
ブワッ!!
放たれる朧の霊力。危険を察した虎太くんが、巨大な光の壁を作り出す。
しかし、龍の手と化した朧の爪が、容赦なくその防壁を貫いた。
砕け散った壁の衝撃波で飛ばされる虎太くん。彼を庇うように抱きとめた千鶴も、神社の壁に強く体を叩きつけられる。
『かは…っ…!』
(!!)
圧倒的な力の前に、立ちすくむ。
唯一対等に渡り合える花一匁が朧の全ての攻撃を自らに向けさせ二人を庇うが、千鶴と虎太くんを意識しながらの戦いは防戦一方だ。
「佐助!」
その時。十二代目がその名を呼んだ。はっ!とする少年。
「お前は、陽派の当主を始末しろ!霊力を持たないあの男を消すには、今しかない!」
ぞくり、と震えた。構える伊織は、ぐっ、と眉を寄せる。
動揺する佐助。しかし、十二代目の目を見た彼は、その圧力に従わざるを得ない。