戦乱恋譚
「…っ……」
突然、伊織の動きが鈍くなった。苦しげに顔を歪める彼。
佐助の攻撃を食らったわけじゃない。敵の霊力にあてられたわけでもない。呼吸を乱した彼は、胸元を抑えている。
(…伊織…?)
千鶴が、何かを察したように顔色を変えた。しかし、伊織を助けに行く余裕がない。
キィン!
次の瞬間。佐助によって、伊織の刀が弾き飛ばされた。
武器を失い、目を見開く伊織。朧と交戦していた陽派の折り神たちも、はっ!とする。
佐助が、懐から出した隠し刀を振り上げた。やられれば、確実に致命傷だ。
「伊織!!」
緊迫した私の声が響いた瞬間、綾人の低い声が飛ぶ。
「やめろ、佐助!」
『!』
主の命に、動きが止まる佐助。隠し刀を振り上げたまま、二人は膠着状態となる。
綾人が、碧眼を揺らして佐助に叫んだ。
「手を汚すのは俺だけでいい!お前はそんなことをするな!もう十分、佐助はよくやった!」
『…!』
彼の言葉に、一瞬、佐助が体の力を抜いた
その時だった。