戦乱恋譚
彼が、はっ、と目を見開いた。動揺しているのが、暗闇でもわかる。
もう、酔っぱらいの戯言だとは思われたくない。ここまで来たんだ。この機会を逃したら、後はない。
「…もしかして、俺の霊力を気にして?そのことなら、心配いりません。きっと、華さんが帰った後でも、術が解ければ自然と霊力は戻るはずです。」
「…!…そ、それも、あるけど…!もっと、他にあるの。大事なことが。」
側にいたい、という言葉だけでは分からないのか、この鈍感!だんだん、もやもやした気持ちが込み上げて来た。
いつまでもはぐらかそうとする彼に、つい、募った想いが口から溢れ出る。
「私は、伊織のことが好きなんだよ…!」
「!」
言うはずではなかった言葉。しかし、もう止まらない。
「だから、伊織のことをもっと知りたくなったし、知ったら、もっと近づきたくなった。…お酒の勢いに任せて少し勇気出してみたり、ここまで貴方を追いかけてきたのだって、全部伊織が好きだから…!」
ふっ、と俯き何も言わない彼。その態度に、はっ、と、言葉が止まった。
しぃん、と神社が静まり返る。
…また、失敗した。
こんな一方的な言い方で気持ちを伝えるつもりじゃなかったのに。
これじゃあ、自分の気持ちに気付いてくれないからと言ってわぁわぁ言っている、ただのヒステリー女だ。