戦乱恋譚

「…私、帰れない…」


「『!』」


無意識に言葉が溢れた。目を見開く二人に、震える声で告げる。


「伊織を放って自分だけ安全な世界に帰るなんて、出来ない…!」


この選択が、伊織の我慢を全て無駄にすると分かっていた。だが、もう一度彼に会いたい。何とかして、彼の力になりたい。


『姫さん。あんたに出来ることならあるだろ。』


「え…」


千鶴の深紅の瞳が私を映した。迷いのない視線が向けられる。


『折り神の顕現だよ。これは、姫さんにしか出来ないだろ?』


(…!)


ふと、頭の中に昨夜の千鶴との会話がよぎる。


“姫さんは、“重ね”を知ってるか?”


““重ね”?”


“あぁ。特定の折り神だけができると言われる“強化”のことだ。同じ型の依り代を新たに作り、さらに難しい工程を加えることで、格を上げることが出来る。”


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