戦乱恋譚
「綾人!」
私は、はっ!として碧眼の彼を見た。
「顕現録は、月派の屋敷にあるんだよね?」
「あぁ。十二代目が奥座敷にしまい込んでいた。…それが何か…?」
私は、綾人の着物を、ばっ!と掴んで言い放つ。
「月派の屋敷に乗り込んで、顕現録を奪い返すの…!」
「!」
「“重ね”のページを見つけられれば、朧の霊力を跳ね返す力が得られるかもしれない!」
綾人は、私の言葉に動揺した。こんな提案、彼からしたら“自殺行為だ”と思うに決まってる。
しかも、綾人は本条家を勘当された身。今さら屋敷になんか寄りつきたくもないだろう。
道だけ教えてくれれば、いい。
そんな淡い期待を抱いていたその時。彼は碧眼を細め、むくり、と立ち上がった。
(…?)
無言の彼を見上げていると、綾人はばさり、と着物を翻して私に告げる。
「…今頃、月派の連中は、十二代目を筆頭に神城家に向かっている。おそらく、屋敷はガラガラだ。狙うなら今しかない。」
「!」
「来い。俺もついて行ってやる。“弔い合戦”の始まりだ。」