戦乱恋譚
(…今さら後悔したって、遅いよな。)
…と、自嘲気味にため息をついた
その時だった。
───ぴくん!
虎太の獣耳が、わずかに反応した。彼は兜をつけて戦闘態勢に入る。
『伊織さま、来ました!……敵の霊力です!!』
「!」
ふっ、と、折り神達の顔が険しくなった。禍々しい気配を感じた瞬間。屋敷の門が破られた。
ドォン!!
吹っ飛ばすように破壊された壁。
そこに見えたのは、“十年前”と同じ光景だった。
「…首を洗って待っていたか?神城伊織…!」
漆黒の羽織りが風になびいた。不敵な笑みが月光に冴える。
「…来たか、月派…!」
咲夜が、刀を構えて威嚇した。折り神達も、警戒の霊力を放っている。
(あれ…?)
俺は彼の近くにいるはずの青年がいないことに違和感を覚えた。先陣を切って来るはずの幼馴染みの姿が見えない。
すると、十二代目はふっ、と、冷たい目をして口を開いた。
「綾人なら、ここには来ないぞ。…あいつとはもう縁を切った。死んだ折り神にいつまでも執着しやがって。…今頃、どこかでのたれ死んでるだろうな。」
「!!」