戦乱恋譚

思わず、カッ!となった。

仲間思いの綾人のことだ。佐助の一件で先代に歯向かったのだろう。

彼が受けたであろう制裁を想像すると、心臓が握りつぶされそうになる。

十二代目は、怒りを露わにする俺を見て、嘲笑した。そして、低く、地の底から響くような声で言い放つ。


「さぁ、お喋りはこれくらいにして、さっさと始めようではないか。…今日が、陽派の終焉だ!」


ブワッ!!


次の瞬間、月派の霊力が屋敷中にに放たれ、数え切れない低級式神達が、うじゃうじゃと現れた。

作り出される操り人形の多さに、焦りが滲む。

俺は、ばっ!と兜の少年を見て指示を出した。


「虎太!壁を!」


『はい!』


パァァァッ!!


橙の瞳が輝き、虎太の霊力が溢れ出す。屋敷を取り囲むように作られた光の壁に、十二代目が小さく息を吐いた。


「…ほう。自分の身を守らせるのではなく、町に被害が出ないように屋敷を囲うとはな。…つくづく甘い男よ。」


男は、ギロリ、と俺を睨む。反抗的に睨み返すと、背後に殺気を感じた。


「っ!!」


ガキン!!


すんでのところで、迫ってきた“爪”を刀で受け止める。鈍く光った翠の瞳と目があった。十二代目の声が響く。


「朧!今度こそ、陽派当主の首をとれ!」


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