戦乱恋譚
ゴォォォッ!!
十二代目に率いられてきた月派の部下達が、次々と屋敷に押し寄せた。確かな剣筋で地面に転がしていく咲夜と、それを援護していく虎太。
式神を全て相手取る千鶴も、夜空を舞いながら剣を振るっている。
『…お前の相手は俺だ、朧…!』
俺を庇うようにして割って入ってきたのは花一匁だ。同格同士の戦いに、刺激されたお互いの霊力がびりびりと火花を放つ。
(十二代目にトドメをさしたら、式神も、朧を操っている術も全て消える…!)
刀の切っ先を男に向ける。すると、俺の意図を察した十二代目が、ニヤリと笑って低く唸った。
「…貴様が私に敵うとでも…?身の程を思い知らせてやるわ…っ!!」
交戦が始まった屋敷内。バラバラと崩れる塀に、瓦が落ちていく屋根。千鶴が足場にしていた松の木も、枝がミシミシと音を立てる。
『くそ…!数が多すぎる!斬っても斬ってもキリがねぇ!』
そう叫んだ千鶴は、一振りで四、五人の式神を消してはいるが、それでも分が悪いようだ。咲夜と虎太も、険しい表情を浮かべている。
(やはり、この兵力差じゃ、無謀だったか…?!)
眉を寄せたその時。目の前に霊力で作られた十二代目の槍が振り下ろされた。
「っ!」
紙一重で躱すが、攻撃は容赦なく続く。男の槍で刺された記憶が蘇った。