戦乱恋譚
カキン!!
負けじと弾き返す俺に、少し目を見開いた十二代目。しかし、新しいおもちゃを見つけたような顔をした男は、不敵な笑みを浮かべて俺に迫った。
「どうした!陽派の当主はこんなものか!」
「く…っ…!」
奴は、俺が腹の傷を庇いながら戦っていることを察したらしい。斬撃をかわした瞬間、ドッ!と蹴りが飛んできた。避け切れない攻撃は、腹部に直撃する。
ダン!!
「…っ、かはっ…!」
壁に叩きつけられ、うめき声が漏れた。ビリッ、と激痛が走る。
(…まさか、傷が開いたか…!)
…と、嫌な予感がした
その時だった。
ドクン!
心臓に痛みが走った。急に気道が狭まったように、息苦しさを覚える。
(…!くそ、こんな時に…!)
すると、次の瞬間。頭上から緊迫した花一匁の声が響いた。
『伊織!右に逸れろ!』
「!」
ヒュッ!
巨大な爪が、頰を掠めた。とっさに右に飛び込まなければ、確実に即死していただろう。
朧は、花一匁と交戦しながらも、確実に俺の隙を狙ってきていた。空を飛ぶ彼は、どこの角度から来てもおかしくない。
(十二代目に気を取られていたら、終わる…!)