戦乱恋譚
死なないといえど、ダメージがないわけではない。痛みだって、人と同じように感じるし、血だって流れる。
身代わりになっていい理由など、ないのだ。
「はっはっはっは…!!綾人といい、お前といい、つくづく忠誠心の高い折り神を顕現したものだな!神に救われるとは!」
「…っ!」
高笑いをする十二代目は、神を斬っても何とも思わないような顔でそう言った。怒りがふつふつと湧き上がる。
ドクン…!!
その時、さっきよりも強い痛みが胸に走った。ぐっ…、と襟を掴む。
足に力が入らない。
呼吸が乱れる。
(…!もう少し…もう少し、耐えてくれ…!)
そう願っても、息苦しさは消えなかった。意識が朦朧としてくる。
ザッ…!
花一匁の刀をかわした朧が、まばたきのうちに目の前に迫った。
避け切れない龍の爪が、視界に映る。
(ここまでか…)
走馬灯のように頭をよぎるのは、彼女の顔だった。
「…華、さん………」
…と、絶体絶命の状況下で、うわ言のように呟いた
次の瞬間だった。