戦乱恋譚
パァァァッ!
突然、屋敷を囲む虎太の防御壁が、光を放った。ぐにゃり、と歪む霊力に、全員の動きが止まる。
『い、伊織さま!侵入者です!』
「!」
こんな時に…!まさか、月派の増援か…?と、そんなことを思ったその時。破壊された門に見えたのは、華奢な女性の影だった。
彼女を見た瞬間、息が止まる。
『ひ、姫さま?!!』
虎太が、大きな声をあげた。目を見開く咲夜も、目の前の光景を受け入れられていないように立ち尽くす。
会いたいがゆえに、幻でも見えたかとも思ったが、そうではないらしい。彼女は、怯むことなく、つかつかと屋敷の中に入ってきた。
(なぜ、華さんがここに…?彼女は、元の世界に帰ったはず…?!)
その時。彼女を守るように後ろから現れたのは、漆黒の髪の青年。彼を見た瞬間、十二代目の顔がこわばる。
「…!綾人!貴様、どうしてここに!!」
すると、彼はギロリとかつての父を睨み、凛とした声で言い放った。
「弔い合戦だよ“親父殿”。あんたの悪人ヅラを歪ませてやるのも、悪くはないと思ってな!」