戦乱恋譚
パァン!
光が、一瞬で消え去った。黄金の光が、雪のように空からふわふわと降っている。
私は、霊力を消した瞬間、トン、と崩れた門に舞い降りた青年を見て、声が震えた。
「…ち、千鶴…?」
彼は、以前の彼ではなかった。真っ赤なの折り鶴のピアスに、純白の着物。そして漆黒の毛皮を肩に纏い、背中には立派な羽がある。傷一つない体になった彼は、にっ、と笑ってこちらを見た。
『流石だな。霊力が桁違いだぜ。』
その表情だけは、いつもの千鶴だ。神々しさが増した彼に、綾人も目を見開く。
すると、状況がつかめない十二代目が、瞳を揺らしながら呟いた。
「…ど、どうなっている?奴は、瀕死だったはずなのに…」
千鶴は、そんな奴を一瞥し、私に声をかける。
『そろそろ反撃の時間だぜ。…さぁ。命じろ、姫さん。この俺に、何を願う?』
初めて会った時と、同じ問い。
屋敷を囲む式神の群れ。容赦なく攻める敵の刃。
誰が見ても白旗寸前の状況で、私の声が響いた。
「伊織を月派から守って!」
『…!』
深紅の瞳が、不敵に細められた。
バサリ、と純白の着物が翻る。
『…その願い、しかと聞き届けた!』