戦乱恋譚
パァァァッ!!
凄まじい衝撃波が放たれた。消し飛ぶように塵となって消えていく月派の式神。月派の手下は、風を食らった瞬間、バタバタと倒れ出す。
「!!」
顔色が変わった十二代目。動揺する彼に、綾人が叫ぶ。
「華!あの陣を敷け!」
ばっ!
指示通り、私は十二代目に向かって腕を突き出した。初めて会った時の綾人のように、意識を指の先へと持っていく。
パァン!
男の足元に現れたのは、“綾人の陣”。私に宿る伊織の霊力が、轟々と十二代目の霊力を奪っていく。
「…こ、こんなはず、では……!」
苦しげに顔を歪める十二代目。その時。千鶴の高らかな声が辺りに響いた。
「伊織!今だ!!」
その声に、伊織が地面に落ちていた刀を拾い上げた。渾身の力を振り絞った彼は、ザッ!と刀を構える。
と、次の瞬間。
白銅の瞳をキッ!と細めた伊織は、勢いよく十二代目の霊力のこもった陣を斬り裂いた。
バキン!!!!
「ぎゃぁぁぁっ!!!!」
断末魔をあげて倒れ込む月派先代当主。煙のように浄化されていく男の体は、陽派の光とともに空へ消えた。
パァァァッ!!
十二代目の霊力と共に、手下たちが“和紙”へと変わっていく。全て、本条 宗一郎が作り出した式神だったようだ。
男が完全に消える瞬間。千鶴が空に向かって瞳を細める。
『次、神城の領域を汚したら…容赦はしない。…お仲間連れて、とっとと還れ。』