戦乱恋譚
フッ…!
光の消滅とともに、しぃん、と辺りが静まり返った。
空には、穏やかな満月が輝いている。うっすらと朝焼けの光も見え始めた。
「…終わった…、のか…」
銀次さんに肩を担がれた咲夜さんが、ぽつり、とそう言った。
壊滅状態の屋敷に、呆然とする彼ら。しかし、味方は誰一人欠けていない。
…ほっ…
安心して胸をなでおろした、その時だった。
「…華、さん…」
(!)
ずっと会いたかった彼が、私の名を呼んだ。伊織の着物はぼろぼろに破れていて、まさに満身創痍だ。
「……どうして、ここに…?貴方は、千鶴に連れられて、元の世界に帰ったんじゃ…」
すると、そんな伊織の言葉に、千鶴がニヤリと笑って答えた。
『俺はちゃーんと送ったぜ?“本条の屋敷”までな。』
「!」
月派の本拠地の名に目を見開く伊織。顕現録の奪還に、綾人が手を貸したことを察した彼は、かつての親友に、弱々しい笑みを向けた。
すると、綾人は伊織と私に向かって真剣な瞳で声をかける。
「…十二代目は死んだ。あいつに縛られていた術が、やっと使える。俺が今から、伊織の霊力を戻そう。」
「!」