戦乱恋譚
ついに、この時が来たのだ。
陽派の霊力を奪って、ちょうど一ヶ月。この力が、色々な出来事を巻き起こした。そして、事件が起きるたびに伊織や折り神たちに救われてきた。この世界での思い出が、次々と頭の中に蘇る。
(やっと、伊織に霊力を返すことができる…!)
…と、その時だった。
「…いいんだ、綾人。俺はもう、霊力なんて必要ない。」
「!!」
(どういうこと…?!)
伊織が、綾人の術を制した。彼の真意を測りかね、その場にいた全員に動揺が走る。
「…っ。」
彼に尋ねようとした次の瞬間、ぐらり、と伊織の体が傾いた。そのまま電池の切れたロボットのように倒れ込む伊織。
とっさに抱きとめた綾人も、突然のことに碧眼が揺れている。
「伊織!!」
意識を失った彼に必死で呼びかけるが、反応はない。ぞくり、と体が震えた。
駆け寄って来た銀次さんが、血相を変えて呟く。
「…呼吸が速い上に脈が弱い。…こりゃあ、処置を間違えれば命に関わるぞ…!」
(!!)