戦乱恋譚
(…!)
心が、ふっ、と軽くなった気がした。力強い彼の言葉に、こくり、と頷く。
『よし。そうと決まったら、早速依り代を折ろうぜ。顕現録を見せてみろ。』
部屋の中に戻った私と千鶴は、行灯の明かりをつけて分厚い書を開いた。ゆっくりとページをめくると、千鶴は真剣な表情でそこに描かれた絵と折り神の名前に目を通していく。
…と、あるページで千鶴の肩が震えた。
『…おそらくこいつだ。…折れそうか、姫さん?』
大きく頷いた私を見て『流石だな。』と誇らしげに笑った彼は、表紙の間に挟んでおいた顕現用の和紙を取り出して、私に手渡す。
『さ、ここからは姫さんの腕の見せ所だ。頼んだぜ?』
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「…!できた…!」
数分後。ようやく形になった依り代に、千鶴は目を輝かせた。何度も顕現録の見本と見比べて、誤りがないことを確認する。
そして、精神を落ち着かせた私は、依り代に向かって声をかけた。
「“神聖なる式神様。力を持って依り代に宿り、我に仕えよ。”」
ポゥッ!!
私から放たれた霊力が、部屋に大きな陣を敷く。光を帯びた依り代が、どくん!と大きく脈打った。
「“折り神、顕現!”」