戦乱恋譚
パァァァッ!!
「「!!」」
障子から漏れる光。真夜中の閃光に、思わず目を瞑る。
パァン!
光が消えた気配がした。恐る恐る目を開けると、畳の上に見えたのは、幼い“少年”の姿。
『───お呼びですかっ?姫さまっ!』
先がはねた黄金の髪に、くりんとした橙色の瞳。振り返った少年は童顔で、十歳くらいの印象を受ける。
華奢な体に不釣り合いな兜(かぶと)を被り、可愛らしい笑顔を見せる彼。
「あなたが、“兜”の折り神…?」
『はい!…ぼくの名前は“虎太(こた)”!姫さまを守護する力を持った折り神です。』
無邪気な瞳で私を見つめる虎太くんは、まるで天使のようだ。ぶかぶかな兜が愛おしい。
『虎太、久しぶりだな。』
『!千鶴さま!貴方も顕現していたんですね!』
『あぁ。華が今の俺たちの主だ。』
千鶴の言葉に、ふいっ、とこちらを見た虎太くんは、きょろり、と辺りを見回して私に尋ねた。
『…それで、姫さまはどうしてぼくをお呼びに?月派の気配は感じませんが…』
すると、千鶴が真剣な表情で彼に告げた。
『虎太。お前は覚えているだろ?“十年前に起きた事件”のことを。』
『!』
『あの日、伊織に何があったのか、姫さんに話してやってくれねぇか。』