戦乱恋譚

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「…ここ、だよね…」


まだ慣れない屋敷を進み、辿り着いた離れ。窓の障子からは光が漏れている。どうやら伊織はまだ起きているらしい。

ごくり…と、喉が鳴った。いざ来てみたが、やはり扉を叩くのを躊躇してしまう。伊織の冷たい表情と声が頭をよぎった。


(…でも。話すなら今しかない…)


背中を押してくれた折り神たちの姿を思い浮かべて、覚悟を決める。


…トントン。


「伊織…!…わ、私です。華です。」


引き戸を叩くが、返事はない。それほど怒らせてしまったのだろうか。


「夜遅くにごめんなさい。少し話がしたいの。……?…伊織…?」


部屋からは、物音一つしない。その時、昼間の銀次さんの声が響いた。


“…だが、一度だけ、無理がたたって病をこじらせ、倒れたことが…”


(まさか…!)


「伊織!大丈夫…?!!」


…と、私が勢いよく引き戸を開けた

その時だった。


(…!!)


視界に映ったのは、大きな木彫りの彫刻。柱に貼られたお札と、陣の描かれた骨董品。机の上に置かれた小さな猫の人形の首輪にも、なにやら光を放つ石がついている。

家具は布団と机と本棚しかないものの、それ以外の用途不明の物品が、所狭しと並んでいた。


(こ、これは…?)


私が思わず言葉を失った、次の瞬間だった。


「華さん…?!」


「っ!!」

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