神様には成れない。
たったそれだけだけれど、単純だったけれど嬉しいだなんて。
「うん。そうだね、ありがとう」
「でも、瀬戸さんもそう言う事気にするんだねぇ」
物珍しげな様子で、彼は居住まいを正す。
先に、人の評価も言葉も周りの目も気にしない人と彼は私に対してそう評価しているのだ。
覆すような発言が成されたのだからその反応も妥当だった。
「淵くんは良いように私の事言ってくれてるけど、私だって普通にそんな事思う時があるんだよ。……多分」
曖昧な言葉を付け足すほどに、私は自分自身の事に気づけていなかったのだ。
もしかすると私は単純に鈍感なのかもしれない。人に対してもそうだけれど、自分に対しても。
「……うん、じゃあ分かった。瀬戸さんの誕生日には俺が歌を歌うね」
きっと、そう簡単に言える彼の方が純粋で優しい人なのだろう。
だからこそ、私は淵くんと過ごす時間が好きだと実感せざるを得ない。
「だからさ、今日は俺の為だけにお祝いしてよ。瀬戸さん」
真っ直ぐに見つめる目を見つめ返し、私は口元を緩めて息を吸った。