神様には成れない。


「――……改めて、お誕生日おめでとう。淵くん」


仕切り直すと羞恥が込み上げてきて、頬が熱かった。

自然と視線は下に下がってしまう。

彼が私の視界から外れて、次いで映るのは自分の手元。それでも返答が返ってくることなく、沈黙が流れる。

静かな深夜は少しの音でさえ耳に届く。

なのに、聞こえるのは自分の僅かな息遣いだけで他にこの部屋からは聞こえてこない。


「……?」


不思議に思い、恐る恐る顔を上げてみれば目が合う。

しかし、それだけだ。ゆっくり瞬きが成されるだけで、他に動きはない。


「あの….…?淵くん?」


彼に対し問いかければ、漸くゆるりと口元が緩められた。


「――やっぱり人から直接祝ってもらうのって嬉しいね」


照れ臭そうにしながらも、噛みしめるように言いまた笑みを溢す。

何となく。


本当に何となくだけれど、淵くんに少しでも近づけたような気がして


「っ~~」


私も一人、その嬉しさを密かに噛み締めたのだった。


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