神様には成れない。
「う……」
暗い。何も見えない。それでも淵くんが腕ごと服の袖で私の目を抑えているのが分かる。
行き場のない手が彷徨って地に落ちた。
「ごめん、泣かせて」
「ちがっ、淵くんのせいじゃ……っ!」
喉に何かが詰まったように言葉が上手く出せない。
彼が謝る出来事ではないのだ。私が勝手に泣いているだけに過ぎない。
情けない私を気遣う必要など何処にもない。
それすらも言葉にできず、ただただ、悪くないと言う代わりに、私の目を抑える彼の腕を縋るように掴んで、緩く押し上げる。
ゆっくりと暗かった視界が明るくなる。
開けた視界で一番に見えたのが目の前に座る淵くんの姿で、困ったような表情を見せていた。
「まだ涙出てる」
「……」
目が抑えられている間にも彼の服の袖を濡らしていたのに、まだ涙が落ちる。
「ごめんね」
彼は目元を親指で拭うようになぞり、次いで両の掌で私の頬を包みこんだ。
その掌はひんやりとしていて、熱を持つ肌には心地良い。
体温を感じ取るように、ゆっくりと瞬きを繰り返す。
彼の呼吸に合わせて私も呼吸をしてみる。
それでようやくざわついていた気持ちが落ち着き始めるだなんて。
どうかしている。私はこんな人間だっただろうか。と思うも、今はただこの手に触れられている事に安心して、ほっと息を吐いた。