神様には成れない。


完全に気持ちが落ち着き、元の自分に戻る頃には涙も止まっていた。

それでも淵くんは私の頬を包んだまま、一定の距離を保っている。

表情を見れば、彼の方が落ち着きがないようにソワソワと視線を彷徨わせているようだった。


「あの」

「うん?」


声をかければ瞳を此方に寄越して目を合わせてはくれるのだが、次第にその視線も下がってしまう。

ああ、申し訳ない事をしてしまったと罪悪感に苛まれる。


「な、泣いちゃってごめんなさい」

「瀬戸さんが謝る事じゃ……」

「でも、淵くんを困らせちゃってる、よね?」


核心を突いてしまったようで、うっ、と息を飲み、元々下がっていた視線を更に下げて俯いてしまった。

伏し目がちに言葉を溢す。


「困ってる、って言えば困ってるし、こんな話瀬戸さんに聞かせちゃって情けないとか、色々思っちゃって……」


ぼそぼそと、気まずそうに自らの想いを吐露するその様子が弱々しく思えて、慌ててフォローするように否定する。


「あ、で、でもっ!この通り私もう泣いてないし、情けないとかそんな事は気にしなくてもいいと思うの!」


と、私なりに投げかけてみたのだが、彼は顔を上げて目に分かるくらいムッとした表情を浮かべた。


「泣きやんだのは良かったけど、男としては気にしないのは無理なんだよ」

「うむっ?!」


そうして頬に触れていた手で軽く私の両頬を引っ張る。

まるで照れ隠しだと言わんばかりに。

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