神様には成れない。




私は肩に重みを感じながら次の言葉を待つ。

彼はわざとらしくため息をついてみせた。


「……瀬戸さんって何か、やる事成す事男前だよね。俺すっげー女々しい奴みたいじゃん」


表情を見る事は出来ないけれど、きっと不服そうな顔を浮かべているのだろうと想像する。


「そんな事ない、と思うんだけど。それに、ただ一緒に帰ってただけの時のこと思うと今の淵くんの方が親近感持てるよ」

「はは、何だそれ。……好きだとは言ってくれないんだね」


小さな声で呟きの様に零す。

肩口に寄せた頭が、まるで摺り寄るかのように僅かに動いた。

やはり顔が見えないので、どんな表情でどんな気持ちで言っているのか想像すらできないのだが、私が言えることは私自身に嘘をつかない事だ。

そして、彼への想いを大事に育てる事。


「……――でも、今そう言われても淵くんは困るでしょ?」


まだ、言わない。言えない。

混ざり合って泣いてしまった感情から、一つのそれを掬い上げてあげるまでは。

と思うのに


「そうだね。でも……えい」

「へっ!?」


彼は私の背に両腕を回し、抱きしめる形をとった。


「な、な、なん?!」

「ふっ、あははっ、これだと瀬戸さんも動揺するんだねぇ」


心底楽しげに声を上げて、平然と私の髪に自身の髪を絡ませる。

まるで、そう、愛でるかのように優しい手つきで。

だからって、私が平静でいられるかと言えばそうではなかった。

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