神様には成れない。
「お?電話?ごめんごめん。黙ってるね私」
彼女は気を利かせてそう言いながらスマホを弄り始めるのだが、私はと言えば反応鈍く固まってしまう。
何を言うかなんて考えてもいなかったのだ。
『あれ?もしもーし?』
その間も彼は再び声を上げる。
「あり?瀬戸ちゃん?電話するんじゃないの?」
「う、あ、うん」
訝しげに此方を覗き込む彼女に半ば促されるように、スマホを耳に当てた。
「……もしもし?」
『はいはい?どうかした?』
応答するのに時間を要したにも関わらず、普段通りの声が返ってくる。
そう、彼は変わりはない。
「っ、」
変わってしまったのは私の方なのだ。
耳元で彼の声が聞こえるだけで深夜の出来事を思い出してしまうだなんて、相当重症だ。
全身から熱が上がり頭がクラクラし始める。
彼の家に居た時ですら、彼が目の前に居た時でさえ、ここまで酷くなかった筈なのに。