神様には成れない。
専門学校で学んでいるだけあって、当たり前だが一つ一つの工程が丁寧で私の最低限のメイクとは違う。
こうやって人にやってもらう事なんて初めてで、何だかくすぐったいような気持ちになり、それもまた落ち着かない。
瞳をキョロキョロと動かしていれば、ふと目の前の京ちゃんと目が合った。
彼女は小首を傾げて口元を緩める。
「そんなに心配そうな顔しなくても、顔の造り変わるほどの化粧もしないわ」
「ふふ……顔の造りって」
言い方が不思議で思わず吹き出してしまう。動いてしまったからか、彼女はまた無言で私の頭を軽く抑えたのだが、笑ってしまうのも仕方のない事。
京ちゃんは、メイク道具を選び取りながら得意げに言う。
「だって、詐欺メイクは私の得意分野だもの。千花の顔だってきっと変えれるわ。自分の顔を毎日飾っているんだもの」
自虐ともとれる言葉をサラリと零す。
淵くんと佐伯くんとご飯に行った時もそうだった。彼女は平気で自分を貶す。
それに私はこっそり悲しいような気持ちを覚えるのだが、彼女は至って普通で、むしろ自分の腕に、メイクの出来に自信を持っている様にも見えてほっとする気持ちも感じるのだ。
高校の時の彼女はいつだって下を向いていて、こんな風に顔を上げてはいなかった。
「京ちゃんお化粧上手だもんね」
「ありがと」
率直に感想を述べれば、彼女は嬉しそうに笑みを浮かべた。