神様には成れない。


驚きに思わず小さく声を漏らせば、その紅い顔のまま彼は少し怒ったように目を尖らせた。


「あのねぇ、予想外の事しないでくれるかな……」


それなのに言葉は弱々しくて噛み合っていない。

つまりは彼らしくもなく照れているらしい。

そんなのは気持ちを口にした私だって同じだけれど、今は伝えれた事を心地よく感じる方が強いのでまだ平然とその様子を見ていれた。

それどころか、微笑ましいような気にさえなって余裕さえ生まれてくる。

油断すると零れる笑みを噛み殺す。しかし、実際私の表情は緩んだままだっただろう。


「淵くんも照れたりするんだね。言われ慣れてそうなのに」

「何だそれ」


対照的に彼は不服そうな、でもやっぱり照れたままの表情で私を見遣る。

それもほんの少しの間だけで、空いた左手を耳の辺りに持っていき半ば諦めたかのように一つ息を吐いた。


「――……瀬戸さんが俺の事どう思ってるか知らないけど、言われ慣れる程言われてる訳でもないし、こんな事言われ慣れるのもおかしいでしょ」

「う……確かに」


正論を突き付けられ、配慮に欠ける発言をした事に気づく。

彼は恋愛に関して何処か冷めていると思っていたのだが、根本では真面目に受け止めているらしい。

ただ、これまで踏み込むことをしなかっただけで。


「それに、好きな子に好きだって言われてるんだから何も思わない訳ないじゃん」

「……私が好きでいいの?」

「何言ってんの。瀬戸さんじゃないと嫌なんだよ」


これから踏み込もうとするのだ。

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