神様には成れない。
問いかけながらもゆっくりとした歩みを止める事はない。私が言うとおりにホームに向かう。
「京ちゃんの家に寄って帰ろうと思ってて。えっと……途中で地下鉄に乗り換えようかな」
京ちゃんの家と淵くんの家はさほど離れては居ないので彼の降りる駅まで行っても歩けない距離ではない。
京ちゃんの家に行くのに乗り換えるのが手間な時などは普通に歩く事だってある。
しかし、暫く履いていて慣れていないヒールでも少しはマシに歩けるようになってはいたにしろ、出来れば最寄の駅まで行ってしまいたい気持ちがあったのだ。
「ん、分かった」
コクリと頷きが返ってくる間にもホームへと降り立っていて、電光掲示板を見れば後数分もすれば電車が来るようだった。
休日ながら、この駅自体もそんなに混みあう程でない事もあり、列と言う列は形成されていなかった。
二人並んで待つ間、線路の方を眺めていたのだが何となく気になり隣を盗み見ると当然の如く彼と目が合い、慌てて逸らす事も出来ずに固まってしまう。
じぃっと丸い目が私を見下ろす。
「ど、どうかした?」
耐えかねて問いかけてみれば、彼は少し身を屈めて私の顔を覗き込んだ。
「ちかっ……!?」
堪らず声を上げれば、彼はキョトンとした顔を浮かべた後に口元を緩めた。
「え~~?今更すぎない?」
「今更とかそう言う問題じゃないよ!」
「あ、ほらほら電車来た」
「~~!」
彼にとっては何でもない事でも、私にとっては一つ一つ過度に反応してしまう事なので悔しくなる。