神様には成れない。
「えーっと、そんなに言い辛い話なら適当に流してくれてもいいんだけど」
「言い辛いとかじゃないんだけど……開けた理由も大学デビューみたいな感じだから、今にして思えば怖い思いしてまで開ける必要性がなかったと言うか」
モゴモゴと単純な理由を述べては何と無く右耳に触る。
開けた事を後悔しているわけでもないのだが、慣れない事をした自分の行き場が今もないのだ。
「俺の周りでもそういう子多かったなあ。高校卒業を機にって」
「私もそれなんだよね。地元が結構田舎なんだけど、行く大学が都会だから、都会の子に舐められないようにって意気込みを兼ねて」
「都会の子って」
くくっと声を噛み殺しながら笑う。
「だ、だって、当たり前だけど学校の規模は違うし、人だって地元と違って怖そうだし……!」
「でもそんな事なかったんでしょ?」
まるで知っているかのように言われて、うっと息を飲み込む。
「そう、だね。」
私の意気込みは空回るくらい、新しい場所はそれ以上に新鮮で楽しい場所だった。だからこそ余計に恥ずかしいと感じてしまうのだ。
「それに、恥ずかしいなら塞いだらいいのに」
「うん……そうなんだけど、こうなったら高校生の頃の私を忘れないために願掛けにしてしまおうって。大学、頑張りたいから」
「へぇ……」
感嘆のような声が隣から聴こえてハッと我に返る。
思わず語ってしまった。
「って、変な話しちゃったね!」
誤魔化すように切り上げて、今どの辺りを走っているのかと確認しようとした。