神様には成れない。
電車内の液晶に目を向けると必然的に彼が視界に入る。
そのまま視線が奪われるように、其方を向いてしまうのは何故だったのだろう。
「変な話なんかじゃないよ。偉いね、瀬戸さんは」
きっと彼が、それすらも受け入れてくれるからなのかもしれない。
「偉くは……ないと思うんだけど」
「んーん。そうやって前向きに捉えられるの尊敬する」
称賛するような事を言われて照れくさくなりまた視線を少しだけ左にずらす。
「……あれ?」
「ん?」
「淵くんの方こそ、ピアスしてた?」
良く見ると彼の左の耳たぶには良く見なければ分からないけれど、近距離になると気づける小さな跡のようなものがあった。
彼は僅かに目を見開いて指先で耳に触れた。
「あ~~……そう。穴拡がってたから塞がるの遅いみたいで」
「えっ、広がるの……!?」
「ううん。俺の場合ピアス引っ張ったからそうなっただけで、よっぽどじゃなかったら大丈夫だと思うよ。そんな怖がらなくても」
「引っ張っ……!?」
怖がらなくてもいいと言われても、淡々と言ってのける言葉は痛々しくて恐怖を覚える。
ピアスを開けておいて変な話だけれど、私は痛いのもその手の話も苦手なのだ。