神様には成れない。
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一限目の講義と言うのは何とも眠い。
広い講義室を見渡してもあくびをしている人や、始まるまで寝ている人もいる。
私はと言えば席を確保してから、友人が電話で外に出てしまったので一人、あくびを噛み殺していた。
「おっはよ~~瀬戸ちゃん!悪いけど奥詰めて貰っていい?」
そんなところに軽快な声が掛けられる。
「おはよう。莉子ちゃん」
挨拶をしつつ今は席を外している友人の荷物を持って、言われるまま莉子ちゃんが座れるように左にずれる。
すかさず彼女は「ありがと」とお礼を言いながら空いたスペースに座り、雑に荷物を机に置いた。
「で、どうなったの?あの後」
開口一番指す言葉は洋食屋で出会った時の事。
期待するような眼差しで莉子ちゃんは私の言葉を待つけれど、その前に言いたい事はあった。
「どうなったのって、それより何で急にあんな事言ったの?」
「何でって、普通に発破掛けただけだよ」
悪戯めいた笑みを浮かべる。
「発破……」
「まあ何も確認しないまま言っちゃって、只の友達だったら悪いとは後々思ったし、瀬戸ちゃんに恨まれるならそれはそれで仕方ないなって」
「う、恨むなんてそんな」
唐突に不穏な言葉を選び取られて、慌てて否定を唱える。
けれど、彼女は首を振って言うのだ。
「こんな言葉一つで、上手くいけばそれはそれで嬉しいけど。上手くいかないならあわよくば私が……なんてね」