神様には成れない。
そう思われても致し方ない所もあるのかもしれないけれど、家は別段そう言った感じでもないのだ。
「うーーん……何て言うんだろう。私のお母さんなんかは、何事も経験を積みなさいっていうようなタイプだから、割と何でも背中を押してくれるんだよね。後悔するような後ろ向きな娘は要らないって言って」
「へぇぇ……強かな人なんだね」
「強か。そうだね。自分のお母さんの事だけど、私もそうなりたいなって憧れてて。大学もこっちにしたのは、お母さんが生まれ育った所だからなんだけど……――」
と、まで言いつつ、大学を此方にした理由はおそらく母も父も気づいているにしろ、この話は誰にもしていないので急に照れくさくなる。
また恥ずかしい事を語ってしまった。
私は彼の方を僅かに見上げ、お願いを申し出る。
「こ、この話は、恥ずかしいから内緒にしてね?」
誰かに言うだなんて思っては居ないけれど、彼の内にだけ留めておいて欲しいのだ。
先までペラペラと喋っていたのに急にこんな事を言い出すからか、彼は私を見て笑った。
「あははっ。隠すような事じゃないじゃん。良い事だよ。尊敬できる人が居る事も、母親に憧れるのも」
「う……わっ??」
俺だってそうなりたい。とクスクス笑いながら、彼は私の頭をポンポンと叩く。何故だかその動作は幼少期の頃を彷彿とさせた。
母親と父親に頭を撫でて貰った頃を。
「っ!」
なんてことを思いだしている私と、今私の頭を撫でているのは彼だと言う事実にまた恥ずかしさを覚えて、ぶわっと体温が上がる。
同じ行動でも、人によって意味など変わってくるのだ。
「いーよ。このことは二人の秘密ね」
「う……、はい」
いつだって平常心の彼とは違い私は未だに落ち着きがない。微妙な反応を示す私を彼は更に可笑しそうに笑う。
そして数度、手を頭に撫でつけて乱れてしまった髪を直してくれる。
「そうやって瀬戸さんがどんな事でも自分の話してくれるの、嬉しいんだよねぇ」