神様には成れない。


そう言われても私はどうしていいか分からずに、彼を見上げながら行き場のない自分の両の手を何となく握る。

彼はその言葉の通り嬉しそうにニコニコと笑っていた。


「はい。髪直った」

「あ、ありがとう」


私だって話を聞いてもらえるのは嬉しい。口に出すともっと頑張ろうと思えるから。だが、


「あの、」

「ん〜〜?」

「――……私だって淵くんの事全然知らないから、知りたいんだけど」


私は彼の事をまだ分かっていないのだ。

彼は虚を突かれたかのごとくパチパチと瞬きをして、次いで目を細める。


「いーよ。瀬戸さんが知りたいなら何でも答えてあげる。何知りたい?誕生日?家族構成?あ、それともスリーサイズ?」

「……ふざけてるでしょ」


変に明るい声質で言ってのけて、おどけてみせるので咎めるように意を唱える。

しかしながら、こんな彼も何だか久しぶりに見るような気がする。告白する前はずっとこんな感じではあった筈なのに。

私の様子を見てごめんごめんと言いながらも、また可笑しそうに笑うため何となく気を削がれてしまった。いつだって彼は楽しそうだ。

それでも淵くんはうーーん、と考える仕草を見せて私の言葉を真摯に受けとめてくれているようだった。


「って言っても、案外自分の話をするのって難しいから……あ!うん、分かった。じゃあ俺もちょっとした秘密」

「えっ」

「俺のあのマンションの部屋に来た人って瀬戸さんが初めてなんだよね」

「へっ?!」

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