神様には成れない。
知らなかった自分が顔を出す。
胸に隠した気持ち悪い感情を吐き出せないのは息が詰まって苦しい。また繰り返してしまうのか。
いや、隠すつもりなんて毛頭ない。ないのだ。
「あっ、あの……!」
「ねぇ瀬戸さん。この後時間ある?よかったら家に来て話の続きしよう」
「あっ!そ、そうだね!そうしよっか!……あれ?」
意を決して先に問題を片付けようとした所だっただけに、思わぬ提案に反射的に返してしまい後々に首を傾げる。
もしかして私は軽率に返答してしまったのではないか。と。
意識をした方がいいのか。と。
何てことを頭の中でグルグル考えている間に、腕を掴んだままだった手がスルリと下がる。
「へ……?」
「ほらほら。早くしないとまた終電逃すよ」
「わわっ?!」
何とも自然な動作で私の手を掴んだかと思えば、そのまま手を引き早足に駆けていく。
力強い引っ張りに促されるように、私の足も動き始める。
「――……」
その横顔は笑みを浮かべていて、独りグルグル考えていた事が馬鹿らしくなった。
彼はどこか掴み処がないけれど、時に無邪気でそこにまた心安らぐ瞬間があるのだ。