神様には成れない。
施設の敷地に踏み込めば、休日だからか人で溢れ返っていた。
親子連れや友人同士、恋人。そんな人たちが見受けられる。
左手には水族館と思われる施設がある。その向かいにはレストラン街が始まっていてそのまま真っ直ぐ突き進めば建物の中に入れそうである。
思わず視線だけをキョロキョロと動かして周りを見てしまう。
「折角だし、出来る限り回ろっか」
私が何処からいこうか迷っているのを察したのか、半歩後ろを歩いていた彼が声を掛けてくれる。
そのまま今度は、一歩私の前に出た。
「いいの?」
「いいんだよ。瀬戸さん楽しそうなら俺も楽しいし」
「あ、ありがっ……!?」
「うわっ!?」
不意に真横から強い衝撃を受ける。丁度膝の位置でガクンと力が入らなくなり危うく崩れ落ちそうになるも、反射的に彼に手を伸ばし、彼もまたその手を掴んでくれたため、転ばなくて済む。
私は彼といるとよくバランスを崩してしまう運命にあるらしい。
「大丈夫?」
「あ、ありがとう。何かぶつかって……」
「う、えっ……」
衝撃があった方を見るのとその嗚咽が聞こえてきたのは同時だった。
二つ結びに髪を括っている小さな女の子がそこにいた。
見れば尻餅をついている彼女の足元にはカラフルなソフトクリームと思わしきものが無残にも落ちていて、ヒヤリとした感覚を覚えたと思えば私のスカートにはベッタリとカラフルな色が彩られていた。
「わっ!ごめんね!」
慌てて彼女の目線に合わせれば、べちゃりとスカートからソフトクリームが滑り落ちる。
「ふぇ……」
ぐずぐずと涙を浮かべる彼女は、その雫を拭う事もなく只管に泣き続けていた。