神様には成れない。


子供が泣きだしてしまえば、私なんかじゃ手に負えはしないだろう。それでも、意識を逸らすのだって至難な筈だ。


「……あっちのキラキラしたおみせ」


しかし、不思議な事に彼は一瞬にやってのけたのだ。


「そっかぁ。じゃあ、一緒にあっちまでいこっか。ね?」


手を伸ばしてまるで誘導するように続ける。


「お兄ちゃんも、君が持ってたソフトクリーム食べたいから案内してくれる?」


彼女は何も言わずに只々コクコクと頷き淵くんの手をとる。

彼はニッコリと笑って見せて彼女の手を握り返した。

そうして、コッソリと私に耳打ちをする。


「俺、この子の親探してくるから、瀬戸さん先にスカートのそれ落としてきなよ。シミになっちゃうから」


と言いつつ、立ち上がれば


「ふぇっ!?」


彼女と彼では身長差があり過ぎたのか、手を繋ぐとピンっと腕が伸びてしまう。


「うわっ!?ごめん!大丈夫かな?!」


慌てて彼がまた屈めば彼女はコクコクと頷く。

何ともない事を確認してから彼は彼女にヘラッと笑い、今度は少し背を曲げてゆっくり立ち上がった。

彼は背が高いため、女の子と手を繋ぐのも厳しそうだったが何とか公園の方に連れて行けそうなので、割って入るのも水を差してしまう事になるだろう。

言われた通りに、汚れを落として来ようと私も立ち上がった。


「よし、じゃあいこっか!……っと、あれ?どうしたの?」


そっと離れようとすれば、今度は彼の困った声が聞こえた。

見ればどうやら彼女が歩き出さないようだった。



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