神様には成れない。
彼女よりも見るからに年上で、強いて言うなら小学校中学年くらいだろうか。
そうこうしている内に、その男の子の声が聞こえる距離まで縮まる。
「いたーー!!」
「あ、」
もしかしてと振り返れば淵くんはソフトクリームを受け取る所で、彼女はまた足元に下されている。
受け取った瞬間彼は声を上げながら、足元に屈む。
「あ~~、でもお兄ちゃんちょっとお腹痛くなってきたかも……冷たい物食べたらお腹壊しちゃうからよかったら君が食べてくれない?」
「いいの!?」
明らかに嘘と分かる演技だけれど、女の子は気にも留めず、ぱぁっと笑顔を咲かせて無邪気にそれを受け取る。本当に何とも素直な子だ。
何はともあれ、彼女を探しているらしき子がいたのだから一安心できそうで、
「どこ行ってたんだよ!」
「ふぇ……?にぃ!」
しかし、今度はこの男の子も一人なら両親と逸れたのではないだろうか。
「こら!アンタまで走ったら迷子になるでしょ!」
その心配も束の間で、後ろの人混みから母親らしき人が追いかけて来ていた。
男の子の手をとり、次いで女の子を自らの方に呼んでから、私たち二人を見遣る。
そこに少しの疑念のようなものが混ざる。それも母親としては当然だろう。
しかし、変な反応をする事なんてない。毅然としていればいい。
「――お母さんですか?見つかって良かったです。この子あっちのモールの方まで来ていて、勝手ながら連れてこさせて頂いたのですが」
「あぁ……そうだったんですね。それはお手数おかけしました。ありがとうございます」
「いえ、とんでもないです。……じゃあ、またね」
長話する必要もなく、早々に切り上げてしまおうと最後に彼女に手を振って去ろうとしたのだが
「あっ、あのね、おかーさん、おねーちゃんのおようふくね、」
と拙い言葉で母親に私を指さして何かを伝えはじめる。
「服……?やだ!もしかしてソフトクリームぶつけたの!?」
母親はすぐに言いたい事を察知して、高い声を上げる。それは声が荒げられる間際だ。