神様には成れない。
彼女がまさか気にしていたとは思っていなかった。まさか母親に言ってしまうなんて思わなかった。
「だからあれほど……!」
「っ!」
ビクリと彼女の肩が上がり、目はギュッとつぶられた。
「あの!あの……私がボーっとしてただけなので大丈夫ですよ。それに……ほら子供のした事ですから」
思わず割って入ればキョトンとした表情で母親は私を見遣り、次いで曖昧に笑って見せた。
「そう……ですよね。子供のした事ですもんね」
「――はい」
怒りは果たして誰への物だったのだろうか。
なんて。
コクリと頷いて、心配そうに見上げる彼女と目が合いざまに微笑んでみせる。
「ちょっと待って!それは」
「ちゃんと言えて賢い子ですね」
ずっと黙っていた彼が声を荒げるも、遮って努めて穏やかに喋る。
彼女はソフトクリームを両手で持って、おろおろとまた口を開こうとしていたが言う必要はないと、しーっと人差し指で内緒のジェスチャーをしてやる。
「それでは、私たちはこれで。ほら、淵くん行こう」
淵くんもまた彼女と同じように何か言おうとしていたけれど、口が開かれる前に彼の袖を引っ張る。
彼はそれに促されるように、ようやく歩き出したのだった。