神様には成れない。


彼女がまさか気にしていたとは思っていなかった。まさか母親に言ってしまうなんて思わなかった。


「だからあれほど……!」

「っ!」


ビクリと彼女の肩が上がり、目はギュッとつぶられた。


「あの!あの……私がボーっとしてただけなので大丈夫ですよ。それに……ほら子供のした事ですから」


思わず割って入ればキョトンとした表情で母親は私を見遣り、次いで曖昧に笑って見せた。


「そう……ですよね。子供のした事ですもんね」

「――はい」


怒りは果たして誰への物だったのだろうか。

なんて。

コクリと頷いて、心配そうに見上げる彼女と目が合いざまに微笑んでみせる。


「ちょっと待って!それは」

「ちゃんと言えて賢い子ですね」


ずっと黙っていた彼が声を荒げるも、遮って努めて穏やかに喋る。

彼女はソフトクリームを両手で持って、おろおろとまた口を開こうとしていたが言う必要はないと、しーっと人差し指で内緒のジェスチャーをしてやる。


「それでは、私たちはこれで。ほら、淵くん行こう」


淵くんもまた彼女と同じように何か言おうとしていたけれど、口が開かれる前に彼の袖を引っ張る。

彼はそれに促されるように、ようやく歩き出したのだった。

< 212 / 488 >

この作品をシェア

pagetop