神様には成れない。
きっと、彼女は淵くんの事が大事で好きなのだ。
だから、妹として私に接して見極めようとしていたのだろう。
「なら、お人よしなのか偽善なのかは月乃ちゃんが決めたらいいよ。その上で嫌いならそれで構わない」
「……!」
また、表情が崩れる。
今度は目に見えて驚くように目を見開いた。
無表情は崩せないと言いつつ、こうやって崩れてしまうのは、作っている無表情だからなのかもしれない。
「――貴女はそれでいいんですか?」
なんて、そんな妙に気遣う言葉を掛けてくる。本当の彼女は心の優しい女の子なのかもしれない。
これも私の都合のいい解釈なのだろうか。それでも私は私の信じる物を信じたい。私自身を信じたい。
「うん、それでいいんだよ。10人中10人に好かれるなんて無理な話だもの。だからその中で私を好きだって言ってくれる人を大事にしたい。私の好きな人を大事にしたい」
それを偽善と呼ばれてしまうのならそれでもいい。どんな形でも大事にできないのならそれこそ私自身を信じれなくなる。
それでも大事にできるのなら、私は偽善者で在りたい。
「そんなのっ……!!」
勢いで出たような感情を唇を噛んで堪えて、眉間に皺を寄せる。
こんな言葉を吐く私が嫌なのかもしれない。何となく、分かってしまう。
けれど、彼女は最後まで言う事もなく気持ちを落ち着かせるように大きく息を吐いて言葉を入れ替えた。
「――分かりました。言葉通り、兄の事を大事にしてください。兄は貴方の事がとても好きだと思います。とても大事に想っていると思います」
「う、ぇっ?え?!」
「……何故、そこで照れるんですか?あなたが言った言葉ですよ?」