神様には成れない。
改めてのお願いを受けて、私は月乃ちゃんと駅までの道を歩く。
ゆったりとした足取りの彼女の横顔を見れば二日前よりも穏やかに見えた。
「千花さん、この二日私の我儘に付き合ってくれてありがとうございました」
徐にそんなお礼を述べて、口元を緩める。
「我儘だなんて、そんな事思ってないよ。私も楽しかったし」
「貴女はこの二日間……いえ最初から優しい人でしたね。今だってこうして送ってくれて」
「……」
ああ、もしかして。と思い当たる節が一つ。
彼女は私と二人で話をしたかったのかもしれないなどと考えてしまう。
何か話したい事があって、私を連れ出す口実を言い出したのかもしれない。なんて邪推してしまった。
「貴女は言いましたね。お人よしなのか偽善なのかは私が決めたらいいと」
「うん」
それは大学に行った時に紛れもなく私が言った事で、きっと彼女はこの二日間私を観察していた事だろう。
彼女はピタッと足を止めて、俯いた。
「千花さんを信じる私と貴女を信じれない私が居て、ほんと嫌になります。可笑しな話ですが」
嘲るように吐き捨てて、小さく息を零す。そうして頭が更に項垂れようとしたとき彼女は勢いよく顔をあげて、少しだけ茶色がかった髪を払った。
「だから、貴女を信じれない私は自分の兄を信用する事にしました」
丸い目を私に一心に向けて、その奥にいる自分の兄を見つめる。
太陽の光を受けたその瞳は澄んでさえいた。