神様には成れない。
彼女は一歩、歩き出す。
私もそれに続いて一歩地面を蹴れば、更に駅に向かって進み始める。
「それにしても、兄も形無しですね。大半の女子が述べるであろう顔の良さを言われないだなんて」
私が先に言った好きな所について、クスクスと可笑しそうに笑う。
「あろうことか臆病で弱いと言われる有様」
「そ、それは悪い意味ではなくて……!」
「分かってますよ」
焦る私に対して笑いを噛み殺しながらも、彼女は続ける。
「別に貴女が兄の何処を好きでもいいんです。見目が良い所でも腹が立つほど優しい所でも」
コツン、と踵を鳴らしてクルリとまた私に振り返る。
「それでも、自分が期待した中身を性格を兄に当てはめているようであれば、お門違いも良いところです。そう思いませんか?」
問い掛ける彼女は、私ではない何処か別の所を見ているようにすら思える。
それはそう、淵くんと同じような様子で、冷えたように冷たい視線を携えていた。
彼女は私には問うてはいないのだ。
彼女は私には同意をして欲しいのだ。
「……それって」
不特定多数を否定しようとしているのかとも思ったが、彼と同じように事実に基づいて話をしているのだとすれば
「淵くんが付き合っていた子の事を言ってるのかな?」
ここに行き着いてしまう。