神様には成れない。
「男なんだから適当に放って置いてもいいだろうけど、逆の時は何かと面倒見てくれてるし。しかも、こっちが見てて吐きそうになるほど食ってるしなぁ。かと言って俺も朝早いから……じゃあとりあえず千花ちゃんに鍵借りればって思って」
色々考えて淵くんを心配しているのが見て取れる。初対面の印象からか、本当に放って帰ってもおかしくはないとすら思ってしまう。
淵くんは友達に恵まれているらしい。その様子が微笑ましく感じられる。
「佐伯くん友達想いだね」
「千花ちゃんには負けるけどな~~つって、そうしとけば女の子の株が上がるからなぁ。どう?俺?」
「ふふっ、上がったよ」
照れ隠しなのか本心なのかふざけた様子で言うものだから笑いすら零れてしまう。
佐伯くんは満足そうに口角を上げると、また話を戻す。
「ってことでぇ、その鍵淵に持たせて帰らせてやってくれる?」
「うん、分かった」
淵くんが帰りたがらないのなら余計なお世話。そうは思うけれど、佐伯くんも心配しているし私だって心配に変わりない。
鞄に入れたパスケースを探り、手に取った。