神様には成れない。


佐伯くんは心配してくれているのだが、そこは気にする事もないだろう。

個人的に淵くんの体調の方が心配だ。


「じゃあ、鍵借りて独りで帰れよな」

「え、何。じゃあ、お前瀬戸さんと帰るの?俺も一緒に帰るけど」

「おまえん家この辺りだろ?何処帰んだよ」

「……」

「都合悪くなるとこれだよ~~」


何度もこんな風なやり取りを繰り返しているのだろう、終着点に付けない話に頭を抱える。

それでも負けじと佐伯くんは彼に詰め寄る。


「じゃあさ、俺と千花ちゃんと一緒に行くからさ、それならどうよ!?」

「それなら、別に帰らなくてもいい」

「あ~~……めんどくせ」


低く唸るように本音を溢す。

譲らない事に、時に噛み合わない話に、それでも付き合ってなんとか説得しているのだ。

適当に見えて義理堅い所もある。

それこそ淵くんが言うように放って帰る選択肢だってあったのに。

けれど、何故彼はこうも頑ななのだろう。


「淵くんは何か帰りたくない理由でもあるの?」

「ん~~?別に、そう言う訳じゃないけど何で?」

「何でって……佐伯くんも、勿論私も心配だからお家に帰って休んで欲しいなって」

「そっかそっか。ありがと」


へへっと笑顔を見せてくれるのだが、そうではない。

そうでは無くて、と言葉にしたいのだが上手くいかずに成立しない会話に肩を落とす。

この厄介さは酔っぱらいの人に良く見れる傾向だ。

普段の彼なら素直に帰っているだろう。


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