神様には成れない。
一歩、彼が私に迫る。
「瀬戸さん」
また、彼が私の名を呼ぶ。掠れたような声が耳に入り込み、脳を刺激して体を固める。
それでも私は後ろに下がろうと身を捩らせた。その彼の雰囲気が私をそうさせる。
「佐伯と楽しそうに何話してたの?」
「何、って……っ、」
彼の指先に力が入った。
「何でアイツが瀬戸さんの電話番号知ってんの?」
「なん、で……って……!」
一歩、後ろに下がろうとして背がベッドにぶつかった。
「ふっ、淵くん……?どうしたの?ちょっと、怖いよ……?」
逃げ場がないその状態で、出来る限りに平静を装うように声を出してみる。
それでも声が震えた。
「怖い、だなんて今更だね。何もされないと思ってたの?」
暗闇で目が光を帯びたような気がした。