神様には成れない。
私の名は自分自身でも口にすると分かるけれど、少しだけ呼びづらい。
だから苗字で呼ぶ子も珍しくないし、呼びづらくとも名で呼ぶ子もいる。呼んでると慣れるとも言っていた。
呼び名など好きに呼んでくれても構わない。そう思っていたのに、彼に呼ばれる事はどうやら別のようだ。
「っ、っ~~!」
痛いほどに抱きしめられた力強さと、耳元で名を呼ばれた衝撃とで、一瞬息が止まった。
次いで、呼吸をしようとしても浅く、短い。上手く呼吸が出来なく、酸素不足に陥ったように脳がぼんやりとする。
と、思ったのはどうやら錯覚で、静かな部屋に私の正常な呼吸がしっかりと聞こえているのだ。近くで彼の呼吸を感じ、自身の呼吸を聞いているせいで二つが混ざり合って分からなくなっただけ。
ただただ、心の許容が越えて脳が混乱しているだけに過ぎない。
「せ、せん、か、って……!」
絞り出すように声を出せば、それに応じて腕が少しだけ緩められる。
「来宮さんだって千花って呼ぶし、佐伯だって千花ちゃんって呼ぶし、……あの月乃だって千花さんって呼ぶじゃん。それと一緒だよ」
「い、一緒じゃないよ」
今までだって話の流れで彼の口から私の名が出る事はあった。けれど、今だって同じ筈なのにくすぐったいような気持ちと上昇する体温が羞恥を自覚させるのだ。
彼は確かに特別なのだと。友達とは違うのだと。
それでも私は、私は……
「何で一緒じゃないの?」