神様には成れない。
問いかけにどう返す事が出来たのだろうか。
彼は私の答えを聞かないままに、追い打ちを掛ける。
「人の心を掴むのが上手くて狡いよね。羨ましい」
『狡い』と言うフレーズは最近聞いた事がある気がする。
ああ、そうだ。七夕祭りの時に彼に言われたのだ。それはそう、月乃ちゃんに対する事だったのかもしれない。笑った彼女を見た彼は嬉しそうだったのだ。
そうは言っても、彼だって人の心を……私の心を掴んで離さないのだ。それこそ狡い。
心臓は破裂しそうなほど早く大きく脈打っているし、触れられる事に耐えがたいほどの羞恥は伴う。
逃げてしまいたい。そう思うのに、そうできないのは彼が私に手を延ばしてくれたからなのだ。
「狡いなとか、羨ましいとか、腹立つとか、一杯思う事あるんだけど、やっぱりそれでも好きだなぁって。色々思って、頭グルグルして、今日どうしようも出来なくて……」
彼が身じろぎして、着替えていても肌に残っているそのアルコールの臭いが鼻腔をくすぐる。
強くないその臭いは、彼自身の香りと混ざり合ってクラリと脳が揺れた。
酔った彼を制御する事は私には出来そうにない。
「――……瀬戸さん、腰、浮かせて」