神様には成れない。


囁くように言われたかと思えば次の瞬間には腰を掴まれていて、反射的に逃げる様に立ち上がろうと足に力が入った。


「へ?え、え、うっ、わっ!?」


しかし、その中途半端な体制が良くなかったのか、足が滑ってしがみ付くように慌てて彼の首に腕を回す。

ドタバタと五月蠅い音が耳を刺して、一瞬体が浮いたかと思えば柔らかい衝撃が私の背にぶつかった。


「っ、??」


何が起こったのか分からなかった。仰向けの体にかかる僅かな重力。頭は流れで上を向いて、視界には天井と壁の境目辺りが見えていた。

おかしいと気づいたのはその後で、恐る恐る頭を正面に向ければ、淵くんが私を見下ろしていた。


「う、あ……っ」


パクパクと動く口は声にならない音を漏らすばかりで、言葉を形成してくれない。

何故だか彼は満足そうに目を細めていて、私はただただ拳を握るしか出来ない。

掴んだものは布団のシーツで、衣擦れにも似た音が変な羞恥を煽る。


「押し倒しちゃっ、た」


へへっとまるで悪戯っ子のように笑う。

押し倒したと言うよりは、床から引き上げたと表現する方が近い。いいや、そんな事よりも


「わっ、悪酔いが、すぎるよ……!」

「だって、酔ってるんだもん。仕方なくない?」


ああ、駄目だ。また話が通じない。

話が通じないどころか私を見下ろす黒い瞳は、熱を帯びているようにさえ見え、ゾクリと体が震えた。


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